着物や浴衣などの和服を和裁で仕立てるとき、手順を理解しているとスムーズに作ることができます。
この記事では、

着物や浴衣を自分で作ってみたいけど
何から始めればいいのかな?
と疑問に思った方へ向けて、和服を和裁で仕立てる手順について解説します。
和裁だけでなく、洋裁のときにも使える手順なので、ぜひ参考にしてみてください。
着物を和裁で仕立てる手順は10個

着物を和裁で仕立てる場合、その手順は10個あります。
以前に書いた記事『【和裁と洋裁】違いを徹底比較・洋裁の知識のみで着物を作れるのか詳しく解説』で、和裁の大まかな手順を簡単にご紹介しましたが、この記事ではより詳しく解説します。
着物・浴衣の出来上がり図と各部名称

手順を解説する前に、出来上がりの全体図と各部の名称について、簡単に触れておきます。
着物と浴衣は出来上がりの形がほとんど同じです。

また、部分ごとに名称があるので、着物や浴衣を仕立てるときに各部の名称を知っていると大変便利です。
着物と浴衣は各部の名称もほとんど同じです。ここでは女物と男物の浴衣のイラストで名称をご紹介します。


この記事でも、これらの各部の名称をもとに解説していきます。
着物を仕立てる10の手順
手順1. 採寸

体のサイズにぴったりと合う着物を仕立てるため、着用者の体の各部位を採寸します。
採寸する部位は、裄・身長・着丈・腰まわり・脚の長さの5つです。
採寸についての詳細は『【和裁】採寸の仕方』で解説していますので、こちらの記事もご覧ください。
手順2. 裁断寸法と必要な布の総量の計算

手順1の採寸をもとに、布を裁断する長さを計算します。
着物と浴衣の各パーツは、袖・身頃・おくみ・衿・共衿に分けられます。

幅が40cm内外の浴衣や着物用の生地(反物)の場合はほとんど余り布が出ませんが、幅が90~150cm程の洋服生地の場合は多くの余り布が出る場合があります。

手順3. 地のし

なるべく布目の縦横がまっすぐになるように布を整えます。
綿や麻の着物や浴衣を仕立てる場合は、水とアイロンで地のしをしますが、絹の場合はアイロンのみで行います。
また、布の素材によってアイロンの当て方も異なります。
手順4. 布の総丈を測る

着物や浴衣用の反物は、反物ごとに幅や長さが異なるので、布全体の長さを2回ほど測ります。
洋服生地の場合でも、地のしによって長さが変わることがあるので、しっかり測っておきます。
特に綿地や麻地は地のしの際の水通しで数センチ詰まるので、総丈をしっかり確認しましょう。

表と裏の見分けがつきにくい生地の場合は、このときに表裏が分かるように約80cmごとに1本取りの糸で印をつけておきます。
糸を2本取りにすると布に穴が空いてしまうことがあるので、必ず1本取りで糸印をつけましょう。
反物の場合は、証紙(ラベル)が貼ってあるほうが表です。
洋服生地の場合は、耳の部分の文字や穴の空き具合で表裏を確認します。穴がポコポコと出ているほうが表となります。

証紙とは反物のブランドや、織り・染めの名称が記載されている部分のことです。
仕立てるときに切り離してしまいますが、仕立てた着物地の価値を証明できるものなので大切に保管しておくことをオススメします。

手順5. 積もる

手順2の裁断寸法をもとに反物をたたんで、裁断する線を見積もります。
このときはまだ裁断しません。

手順6. 柄合わせ

布の染むらや傷をよけたり、柄の位置を考えて、裁ち方を決めます。
目立たない下前や地衿より、上前を中心に柄を合わせていきます。
上前身頃の肩山から10~20cmのところに一番良い柄が来るように、布の折りたたみ方を調整します。

もし、配置が極端に悪く、布を少しずらしただけでは柄合わせが出来ない場合は、下前身頃をとる前に袖1枚分をはさんで調整します。それでも柄合わせができない場合は、袖2枚分を先に取ります。

和裁書に載っている反物の裁ち切り図は、下のような表記であることがほとんどです。左側に袖を置いてある図です。
戦前頃までは最後に袖をとっており、このような裁断図は右から文字を書いていた時代の名残といわれています。

今でも多くの和裁書でこちらの表記が一般的に使われていますが、実際に柄合わせをするときは、身頃→袖の順にとっていったほうがやりやすいので、このWEBマガジンでは左側に身頃がある裁断図にしています。

手順7. 裁断

手順2の裁断寸法に合わせて身頃と袖を切り離します。
おくみと衿の裁断は、身頃の印付けをして、おくみ丈の寸法を出してから行うので、このときはおくみと余り布の間は裁断せずに糸印をつけておきます。

手順8. 印つけ

縫うときに分かりやすいように、へらやコテでガイド線の印をつけます。
身頃の印付けをすると衽丈の寸法が出せるので、その寸法をもとに衽と余り布を切り離します。

へらやコテでの印付けは、時間とともに線が消えて見えなくなるので、縫う直前に入れます。
少しずつ縫っていく場合は、糸印(切りじつけ)のほうがオススメです。
手順9. 縫う

手順8で印を付けた部分を目安に縫い合わせていきます。
手順10. 仕上げ

アイロンをかけて試着し、サイズや柄の出方を確認します。
問題がなければ完成です。
着物を仕立てる手順のポイント

以上、着物を和裁で仕立てる手順10個でした。
和裁に限らず洋裁も縫うまでが肝心で、縫う段階までいったらサクサクと進みます。
手順2の裁断寸法は、標準寸法でサイズが合うなら寸法割り出しの計算は省けます。
手順6の柄合わせも、細かい柄であったり無地であれば柄合わせの必要はありません。
手順3の地のしは必須です。着物も浴衣も、それぞれのパーツは大きな面積の布で構成されています。地のしを省略してしまうと、大きな面積の分だけ影響も大きく、着用したり洗濯したりしているうちに寸法が大きく変わっていってしまいます。
手順が多くて億劫に感じるかもしれませんが、ぜひ1着自分で着物や浴衣を作ってみてください。完成したときの喜びはひとしおです。
この記事が少しでもお役に立てば嬉しいです🐋
それでは、
またお会いできる日を楽しみにしております🍀
